桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
08.甥っ子くんの寝かしつけ
「ほら、中入れよ!はじめるぞ!!」
背中を押されてツリーハウスの中に入ると、畳二枚分ほどの小さな空間が広がっている。端の方に荷物が箱に詰められていた。
真ん中にある小さなローテーブルに、朝士くんが取り出したお菓子の箱から材料を並べはじめる。
「……あ、準備万端、だね」
「お湯とクーラーボックスな、必須だからな」
朝士くんが茶色とピンクのチョコペンを湯煎につけて、「はい」と私に渡す。
「彩里、こういうの得意そうだよな」
なんて言って、型を目の前に出されるから。
頭が追い付かないままチョコ作りを始める事となる。
「えーと、朝士くんはさ……いつもこんなことやってるの?」
「まぁ、時々やりたくならねーか?こういうの」
「……うん、やりたかった」
「だろ?」
「子供の頃、こういうのやりたかったけど、親に買って貰えなかったな……」
「智夜はよく買ってくれた!」
「……へぇ、いいなぁ」
買って!やりたい!と、お願いしても買って貰えなかったな。普通のチョコを買った方がいいと言われたな。なんて、曖昧な昔の記憶が思い出される。
そのあと、トッピングして、固まらせて一緒に食べて……
普通に楽しんでしまったけど……。
あれ??私、何か大事なことを言われよね──?
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あれから数日後、私の疑問は何も解消されないまま、ぼんやりと時間だけが過ぎていった。
いつものように、智夜さんと夕飯を食べ、本宅へ行くのを見送った。その後、1人家でボーッとテレビを見ていると、ガチャガチャと玄関の鍵の開く音が聞こえてきた。
不思議に思って、立ち上がり鍵穴を覗き込むと──。
「あれ、智夜さん、と柊くんどうしたんですか?」
「しゃいりーー!!」
玄関に2人が立っているから、慌てて扉を開けた。
まだ、柊くんを寝かしつけている時間の筈なのに。智夜さんが柊くんを抱っこした状態で、家に戻ってきたのだ。
「柊が全然寝なくてさ、外出て散歩してたら、こっちまで来ちゃった」