桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
「わ、本当だ……。目ぇパッチリですね」
「きゃー、しゃいりーー!!」
暗がりの中。家の外灯の下で、智夜さんの腕の中を覗き込んだ。
薄手のブランケットを被る柊くんが目をキラキラさせて、嬉しそうに、体をぐいっと反りかえらせるから。
うわぁ、余計起こしちゃったかな……。
「はぁ、そうなんだよ。たまにあるんだけどね。夕寝が長くなっちゃった時とか」
「でも珍しいですね。こんな時間に外に出てるなんて」
「そんなことないよ。寝ない日は抱っこで外出てるよ」
「へぇ、そうなんですか。あ、茉昼ちゃんはどうしたんですか?」
「アイツは飲み会で、今日は俺が子守り」
そう言って、眉を下げて目を細める智夜さんは、優しい視線を柊くんに落とす。
そっか、茉昼ちゃん……出かけてるんだ。
お酒、大好きだもんね。と、気の抜けた笑いが漏れる。
彼が柊くんを左手で抱っこして、「よしよし」反対の手で優しく背中をトントン叩く。さっきまで、あんなに騒いでいたのに、少しずつ静かになっていくから。
子守り、慣れてるなーなんて、なんとなく思う。
「そういえばさ、」
思い出したように、智夜さんが口を開いた。
「もうすぐ朝士の誕生日なんだよな」
「そ、そうなんですか!?」
朝士くんの名前が出て、少し声が大きくなってしまった。
緊張か、後ろめたさか、ドキドキか分からないけど、なんだか落ち着かない。
不自然じゃなかった、だろうか──。
動揺が智夜さんに伝わっていないか、彼に目を向ける。けど、いつもと変わらない表情を見せるから、気づかれてないと胸を撫で下ろす。
「20歳。どうせ友達呼んで騒ぐんだろうけど」
「えっ……今、19歳なんですか?」
「どっちに驚いたの?19に見えないって?」
ははっと智夜さんが声を出して笑うけど。
いや、大学生なのは知ってたけど。確かに子供っぽいけど。まだ10代だったとは……。
6歳も離れてたんだ。なんか、急に距離を感じる。
「いや、真面目にしてれば年相応に見えるかもしれないですけど、10代って若いなーって」
「アイツは年中ふざけてるからね。思ってることポンポン言うし、興味のあること一直線。俺、育て方間違えたかなってたまに思うわ」
「えー、智夜さん父親みたいなこと言う」
「アイツが20歳かぁ。大丈夫かなぁ……本当に。お前は子供かって突っ込みたくなるよ」
「あはは、本当に子供みたいなとこありますよねー」
「おい、誰が子供だよ?」