桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
話題が反れて良かった、なんて思ったのも束の間で、朝士くんが話を進めていく。
「智夜は、元カノたくさんいるよな」
「……あー、どうだろ」
「ほら、カナエちゃんだろ、さっちゃん、まいちゃん、あみちゃん……あとは」
「あ、朝士待てって……」
「そ、そんなに……?」
智夜さんが焦ったように、朝士くんの台詞を止めるから。きっと、本当なんだ。
なんて、目を向けると、バツの悪そうに顔に手を当てる智夜さんが見えた。
「茉昼ちゃんも結構いたみたいだし、兄妹そろってすごいモテるんですね」
「……いや、そういうわけじゃ」
「茉昼もなー、あいつ男のトラブル多かったからなぁ。智夜もさ、本当に私のこと好きなの?とか女が乗り込んできたりさー」
「待て、盛りすぎだ」
「俺、お菓子買って貰ってさ、お兄ちゃんは他の女の子と遊んでない?とか探り入れられたことあるぞ」
「朝士、ストップ。これ以上話すな」
「なんだよ、修学旅行みたいな話しようと思ったのに!これじゃ広がらねーじゃねーか!」
「お前はどうなんだよ?俺は知ってるぞ。初キスあかねちゃんなんだろ?」
「なんで、知ってんだよ!?」
「あかねちゃんが言ってた。すごい動揺してたって」
「動揺なんてしてねーよ!」
「してたって!高1の春。はじめて遊んだ帰り道。真っ赤になって可愛かったって、俺は聞いた!」
「してねーって言ってんだろ!」
「きゃははっ」
突然、柊くんの笑い声が聞こえるから、部屋の中が一気に静まり返る。
柊くんのことを恐る恐る覗き込むと、スヤスヤと寝ているのが見えて、ホッと胸をなでおろす。
「……寝てます」
「起きたかと思った」
「怖えー……」
さっきまであんなに騒がしかったのに。
その一瞬で誰も話さなくなって──、少したってから背中から寝息が聞こえてきた。
「朝士、離脱だね」
「あ、本当だ」
上半身を軽く起こして、後ろを振り返れば、口を開けて眠っている朝士くんがいた。