桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
「はぁ、余計なことばっか言いやがって」
「……智夜さんが経験豊富なの、知らなかったです」
「は?彩里ちゃんまで勘弁してくれ!」
「ふふっ……冗談ですよ。2人が話してるの面白かったです」
朝士くんと言い合ってる智夜さんは、いつもより子供っぽかったな。
「こいつもさ、寝顔は変わんないんだけどな。デカくなったな」
智夜さんがしみじみと口にするから、振り返って朝士くんに目を向ける。
純粋そうな寝顔。いつもは騒がしいけど……。確かに、寝てると静かで可愛いな、なんて口元が自然と緩んでしまうから不思議だ。
でも、どういう流れであかねちゃんとキスしたんだろう──。
「……あ、智夜さんと朝士くんって、11歳差でしたっけ?」
「学年では12歳かな」
「わ、一回り。で、茉昼ちゃんとは……」
「6歳だね」
「へぇ、2人とも離れてますね」
「正直さ、小6で母親が妊娠したって聞いたときは複雑だったよ……。同級生にもからかわれてさ困ったよ」
確かに、そういうのに敏感な年頃だよね。
「でも、朝士が産まれた時。俺の手を、小さな手がぎゅって握ってきてさ。俺が守るんだーって子供心に思ったの覚えてるよ」
「へぇ、いいですね。朝士くんも智夜さんのこと大好きですもんね」
「えー、本当に?」
「はい。よく"智夜がさ〜"って話してますよ。ツリーハウス作ったのも智夜さんだって話して、本当に嬉そうで」
「はは、黙ってれば可愛いんだけどな」
「本当ですね」
「それに、ほら、うち両親そろってホテルやってるから。茉昼と過ごすことも多かったし、朝士なんて小さい頃から世話してたし」
「……え?」
「飯とか風呂とかも、だいたい俺がやってたし。……中学上がってからだけどな。朝起きたら、もう親いないし、夜も遅かったし」
あまりにも当たり前みたいに話すけど、それって大変な事だったんじゃないのかな。
なんて返していいか分からなくて、一端開いた口をぎゅっと閉じた。
「朝士に落ち着くなんて言葉は皆無でさ、茉昼も、小さいくせによく面倒見てくれたよ」
頬杖をついて、寝転がる智夜さんが、懐かしそうに目を細めて言葉を続けていく。