桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
09.偽りの夫婦
朝の日差しがカーテンから漏れる。
珈琲の香り、フレンチトーストの甘い香りが混ざって鼻をくすぐってくる。
ぼんやりと目を擦り、小さなあくびを落とした。
体が重くて動かない……、じゃなくて、身動きが取れないんだ。
誰かに後ろから手を回されて、ギュッと抱きしめられてることに気がついた。
しかも、背中に妙にリアルな感触があって──。
「ね、朝士くん、起きて……」
「……んー、」
「ねぇってば……あ、当たってるよ?」
「んんっ、……柔らかい」
なんて、むにゃむにゃと寝ぼけた声を出して。
お腹にあった大きな手が、服の裾から上へと滑り込んでくるから、思わず息をのむ。
次の瞬間──。反射的に手が動いて、バチーンと部屋に鮮やかな音が響いた。
「最っ低ー!!!」
「痛ってーな!しょうがねーだろ!寝ぼけてたんだし」
「信じらんない!!」
「それに朝なんだから!生理現象だろ?」
「ちょっとは隠してよ、ソレ……」
「あ?……あぁ」
朝士くんは大きな欠伸をしながら、トイレへと向かっていく。
「……もうっ、」
小さく息を吐いてから、ベッドから出てリビングへと向かうと──。
「彩里ちゃん、おはよー」
「しゃいり、はよ!」
珈琲を淹れる茉昼ちゃんと、部屋の中を自由に走り回る柊くんがいた。
「お、おはよ……」
茉昼ちゃん、飲み会から帰ってきてたんだ……。
「何?聞こえたけど、朝士またやらかした?あはは、まぁ男の子だからね~。あんなもんでしょ?彩里ちゃん、男の兄弟いないんだっけ?」
「いない……けど、姉だけで……」
そうなの?そういうもんなの?本当に?
私がそんなに経験少ないから、過剰に反応してしまうだけ……なのかな。
「あ、聞いたよ!昨日、柊の寝かしつけ協力してくれたんだって?」