桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~



「こっちが、茉昼と柊の部屋で、こっちが俺の部屋」

廊下の奥まで歩くと、部屋が2つ並んでいて、右側が朝士くんの部屋らしい。



「もっと、散らかってると思った」


襖を開けて中に入ると、意外と普通の部屋だった。

朝士くんの部屋は想像していたより、物が少なくて、真ん中には無造作に敷かれてる布団が1組。
窓際には洗いっぱなしのシャツが雑に掛けられている。
ツリーハウスの中の方が、物がごちゃごちゃしていて生活感があった気がするな。


「あぁ?どんなイメージなんだよ」

「床の見えない汚部屋てきな」

「なんだ、それ」

「で、今度は何を見せたかったの?」

「これこれ、彩里に見せようと思ったやつ」

朝士くんが右手を伸ばして、私に見せてきたもの。棚の上に小さな水槽があって、その中に小さな生き物がゆらりと動いた。


「え、なにこれ!?」

薄いピンク色の生き物が1匹。
のそっとした動きで、こっちに顔を向けていた。


「あはっ、可愛いんだけど!ウーパールーパー?」

のっそりと浮かぶように動くから、思わず見いってしまう。


「可愛いだろ?名前モモっていうんだ」

「え、女の子なの?」

「ペットショップで、メスだって言われたらしいんだけど。ふっくらしてきたから、もしかしたらオスかもしれないって智夜が言ってた」

「えー、なにそれ?モモちゃんなのに?なんでモモちゃんにしたの?」

「モモってのは色がピンクだから」

「ふふっ、そのまんまじゃん」

のんびりと流れる空間に、思わず笑いがこぼれる。


「私、ウーパールーパー本当に飼ってる人、初めて見た。なんで、飼おうと思ったの?」

「本当はさ、犬飼いたいって言ったんだ!智夜に」

「えっ、犬?朝士くんが?世話できるの?」

「それ、まんま智夜にも言われた」

わぁ、想像つく……。


「そしたらアイツ、次の日、コイツ買ってきてさー。マジで驚いたよ。犬じゃねーじゃんみたいな。でも、こいつ可愛いじゃん。憎めないんだよな!」

それも、分かる……。

プカプカと浮かぶように動くウーパールーパーをぼんやりと眺めながら、なんとなく考えてしまう。







「ねぇ、朝士くん。普通って何だと思う?」


< 86 / 148 >

この作品をシェア

pagetop