桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
「こっちが、茉昼と柊の部屋で、こっちが俺の部屋」
廊下の奥まで歩くと、部屋が2つ並んでいて、右側が朝士くんの部屋らしい。
「もっと、散らかってると思った」
襖を開けて中に入ると、意外と普通の部屋だった。
朝士くんの部屋は想像していたより、物が少なくて、真ん中には無造作に敷かれてる布団が1組。
窓際には洗いっぱなしのシャツが雑に掛けられている。
ツリーハウスの中の方が、物がごちゃごちゃしていて生活感があった気がするな。
「あぁ?どんなイメージなんだよ」
「床の見えない汚部屋てきな」
「なんだ、それ」
「で、今度は何を見せたかったの?」
「これこれ、彩里に見せようと思ったやつ」
朝士くんが右手を伸ばして、私に見せてきたもの。棚の上に小さな水槽があって、その中に小さな生き物がゆらりと動いた。
「え、なにこれ!?」
薄いピンク色の生き物が1匹。
のそっとした動きで、こっちに顔を向けていた。
「あはっ、可愛いんだけど!ウーパールーパー?」
のっそりと浮かぶように動くから、思わず見いってしまう。
「可愛いだろ?名前モモっていうんだ」
「え、女の子なの?」
「ペットショップで、メスだって言われたらしいんだけど。ふっくらしてきたから、もしかしたらオスかもしれないって智夜が言ってた」
「えー、なにそれ?モモちゃんなのに?なんでモモちゃんにしたの?」
「モモってのは色がピンクだから」
「ふふっ、そのまんまじゃん」
のんびりと流れる空間に、思わず笑いがこぼれる。
「私、ウーパールーパー本当に飼ってる人、初めて見た。なんで、飼おうと思ったの?」
「本当はさ、犬飼いたいって言ったんだ!智夜に」
「えっ、犬?朝士くんが?世話できるの?」
「それ、まんま智夜にも言われた」
わぁ、想像つく……。
「そしたらアイツ、次の日、コイツ買ってきてさー。マジで驚いたよ。犬じゃねーじゃんみたいな。でも、こいつ可愛いじゃん。憎めないんだよな!」
それも、分かる……。
プカプカと浮かぶように動くウーパールーパーをぼんやりと眺めながら、なんとなく考えてしまう。
「ねぇ、朝士くん。普通って何だと思う?」