桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
10.義弟、不穏な誕生日
木の葉っぱが色づいて、風にゆらゆら揺れていた。残暑はまだ残るものの、もうすっかり秋色に染まり始めている。
外からは騒がしい声が耳に入ってきた。
「流石にうるさいな……」
智夜さんがポツリと一言。
「朝士くんの友達きてるんでしたっけ?」
「平日だからお客さん少ないけど、注意してくるか」
そう言って、智夜さんが席を立った。
「きゃー、智夜さーん!一緒に飲みましょうよ~」
少し時間がたったところで、女の子の声も響いてきた。あかねちゃんだろうか。
そして、すぐに智夜さんの笑い声が聞こえてきたから、結局そのまま飲んでしまったのだろう……とすぐに理解した。
智夜さんって、そういうところあるよね。
コミュニケーションが高いのは良いことだけど。なんて、小さな息を吐いた。
今日は、朝士くんの誕生日で友達が遊びにきている。前にカフェで会ったあかねちゃんと、あと1人男の子がきているらしい。
コンコンと窓が叩かれる音がして──、
「さーいりっ、彩里も飲もうぜ!」
その方を見ると、窓から顔を出したのは朝士くんだった。缶チューハイを片手に。
「俺、はじめてお酒飲んだ~、ははは、ジュースみたいだな、マジで!」
あれから朝士くんは、変わらず接してくれている。
それがありがたいのか、少し落ち着かないのか、自分でもよく分からないまま。
「……朝士くん、顔赤いよ?」
「俺、今日、誕生日!」
「うん、おめでとう」
「俺、20歳。大人~」
「だから、おめでとう」
「彩里、プレゼントないのー?」
窓の桟に肘をつき、両手を組んで、目をとろんとさせながら口許を緩める。
あまりにも自然にねだられるから、一瞬だけ言葉に詰まった。
あんなことを言っておいて、誕生日プレゼントなんて渡すのは少しおかしい気もしたけど。考え過ぎなのかな。
「はい。たいしたものじゃないけど」
「マジか?」
小さな紙袋を差し出すと、朝士くんは嬉しそうに受け取って、すぐにベリッと開けた。