桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
「うぇーい、彩里連れてきた~」
結局、朝士くんに押し切られる形で来てしまった。
管理棟の前のスペース。
前に茉昼ちゃんと女子会をやった場所だ。
テーブルの上には、お菓子とアルコールの缶がずらっと並んでいる。
「あ、彩里ちゃん」
ビールを片手に、智夜さんがこちらに気づいて手を上げる。その反対の腕には、あかねちゃんがぴったりとくっついていた。
え、その距離、近くない?
「あかね、嫁も来たし離れな」
隣にいた若い金髪の男の子が、呆れたようにため息をつく。
この子が、彩都くんかな?
軽く会釈されて、私も曖昧に頭を下げた。
見た目は派手だけど、意外とちゃんとしてるのかな。
「えー、やだやだ、智夜さぁん!なんで結婚しちゃったんですかぁぁぁ……」
「ははは。あかねちゃんには彩都くんがいるじゃないか」
「俺、この先も智夜さんに敵う気がしませんよ」
あかねちゃんは智夜さんから離れようとしないし。
彩都くんが引き剥がそうとしても、全然動かなくて──。
「彩里、あかねはいつもこんな感じだから気にしなくていいぞ~」
なんて朝士くんの言葉に、いや、むしろ"いつも"が気になるんだけど。
「あー、また引っ付いてる!!」
「あしゃー」
聞き慣れた声に振り向くと、茉昼ちゃんと柊くんの姿がすぐそこにあった。
「ちょっと、何やってんのよ!?」
「え~、うるさい妹がきた」
走ってきた茉昼ちゃんが、智夜さんの手を引くけど。あかねちゃんもギュッと腕を掴んで離さない。それどころか、抱きつき出す始末だった。
"仮"にでも智夜さんの"妻"は私なんだけど、なぜか智夜さんを巡って2人がバチバチとバトルを始める。
「お兄ちゃんは既婚者だから、今後こういうことしないでよ!迷惑だし!」
「信じらんない、何で智夜さん結婚してんのよ?」
茉昼ちゃんと、あかねちゃんが騒いでる中、柊くんがこっちにパタパタと走ってきた。
「あしゃー、おめとー!」
「柊、誕生日祝ってくれんのか?」
「あい!これ、どーじょ!!」
落とさないように両手で持たれたどんぐりには、
小さな帽子がちょこんと乗っていた。
「すげー、帽子ついてる!レアじゃん!!柊ありがとな!!」
「えへん!」
得意げな柊くんと、それを本気で喜ぶ朝士くんの姿が微笑ましくて、思わず頬がゆるんだ。