桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
「しゃいりもー、あい、どーじょ!」
「えっ、私にもくれるの?」
「俺の誕生日じゃねーの!?」
「しゃいり、だいしゅき!」
「えー、ありがとう!私も柊くん大好きー!」
「おいおい」
柊くんが私にぎゅっと抱き付いてきて、朝士くんが力なく突っ込みを入れる。
朝士くんの誕生日なのに、可愛いな。なんて、笑っていると。少し離れたところで、あかねちゃんの声がまた一段と大きくなって聞こえてきた。
「あーもう、私、智夜さんならお嫁さんいてもいいですー!!」
「そろそろ、諦めどきなんじゃなーい?」
「はは、ごめんね」
「おい、あかね。お前、飲み過ぎだってば。本物の嫁いるんだけど何言ってんだよ? 」
茉昼ちゃんの皮肉めいた声に、智夜さんの空笑い。続いて、呆れ気味の彩都くんの声が耳に入る。
「だって、だって、私だって智夜さんに一晩でいいから抱かれたいです……」
「こらこら、子供もいるんだからさ」
彩都くんがあかねちゃんの口を後ろから塞ぐけど。その制止を押しきろうとした時、ぐらりと体が揺れた。
そのままバランスを崩して、前方に倒れかけて──。
少し離れたところからでも、2人の顔が近付いたのが確かに見えた。
「あれぇ?智夜さんとキスしちゃったぁ……?」
「ちょっと何やってんのよ!?」
え……?
「えへへ、もう1回、んー」
「わ、あかねちゃん、そういうのはだめだって」
「離れなさい!」
「えー、いーじゃんこのくらい。夜はもっと凄いことしてんでしょー。お嫁さんとぉ」
あかねちゃんが、半分瞼を落としながら私に目を向けてくるけど、どう反応すればいいかわからない。
「だって、この人とベッドのうえでイチャイチャすごいことしてたって……」
「はぁ?」
「凄いエロいちゅーしてたって、朝士も言ってた……」
「そんなある訳ないでしょ!!」
あかねちゃんの台詞を遮るように、大きな声を出したのは茉昼ちゃんだった。
一瞬、空気が止まる。
「ま、まぁまー?」
不安そうな柊くんの表情に、茉昼ちゃんがはっと我にかえった様子で。
「あ……夫婦だしね。そういうのは、うん、普通だよね」
口元は笑っているのに、目だけが笑っていない。
その視線が、ゆっくりと私に向けられるから。
息が詰まって、言葉が出なかった。
「違う、智夜じゃない。彩里とキスしたのは俺だ」