『変人・奇人の時代』~異質学を究める女性准教授の物語~【新編集版】
 昼間からシャンパン? 

 戸惑ったが、しかし、もう昼間ではなかった。いつの間にか夕方になっていた。5時を過ぎていたのだ。先見さんの話を夢中になって聞いていたらいつの間にか2時間が経っていた。
 
「フランスのシャンパンではなくてスペインのCAVA(カヴァ)ですが、美味しいですよ」と言いながら先見さんがシャンパンクーラーからボトルを取り出して布で全体を拭いた。
 それから、栓を覆っているシールを剥がして、ゆっくりとした動作で針金を緩めて外し、栓の部分を布でくるんで右手で持った。
 そして、ボトルの底を左手で回し始めると、グッ、グッ、という擦れる音が聞こえたあとにポンという音がして栓が抜けた。
 泡は零れていなかった。鮮やかな手つきだった。

< 16 / 108 >

この作品をシェア

pagetop