御曹司たちの溺愛レベル上昇中
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帰宅してすぐ、大きな鞄を持って玄関へ。
「今日からシェアハウスなんだ。もう、ここで寝ることはないけど……片付けが終わるまで通うからあと少しよろしくね」
部屋に向かってわたしは小さく笑った。
端から見たらおかしいかもしれないけど、長年住んだお家だから、礼儀よ。礼儀。
「いってきます」
スマホに送られた地図を頼りに、シェアハウスへ。
「……さすが村田さんだ、すごい分かりやすいや」
少しくらい道に迷ったり、分からなくなったりするのかな?と思っていたんだけど、
そんな心配は皆無だったみたい。
色付けされたルートのまま進めば、あっという間に着いた。
「ここだ……」
見た目は他の家よりは大きいな……くらい。
シェアハウスって言われないとわからないな。
わたしは、鞄にいれていたポーチから鍵を取り出した。
シェアハウス行きを決めた翌日、村田さんが鍵を届けに来てくれて──
『お三方がいない可能性もございますので、インターホンは鳴らさず、鍵をお使いください。新しい方が来られる旨は伝えてありますので』
ご心配なく、と。
「……本当にいいのかな」
手にした鍵を一瞥する。
そして、わたしはゆっくりと鍵を開けた。