御曹司たちの溺愛レベル上昇中


「そろそろ下に戻ろっか。琉衣ちゃんも一度鍵盤触れるだけでも──」




『うわぁ……!!』



突如穏やかな空間に二人分の声が響き、思い切りドアが開かれ、
床に倒れ込むように颯くんと響くんが入ってきた。

驚いたわたしと雪さんは顔を上げる。


「……大丈夫?」


心配の言葉を二人にかける雪さん。

いてて、と声をもらす響くんと颯くんは、ゆっくりと立ち上がった。

盗み見したのか盗み聞きをしようとしたのか、どちらも、なのか。こうなった理由はそれしかない。
だからわたしはあえて目を細めて二人を見つめた。

「だから押さないでって言ったのに!颯くんが押すからっ……あ、違う。違いますよ琉衣さん、誤解です」
「俺はべ、別に気になったとかじゃなくて……」


ぶんぶんと首と手を振る響くんと、
挙動不審になる颯くん。


「……わたし、まだ何も言ってないけど?」

「目が物申してるんだよ!」
「颯くんの──"あいつ雪兄と二人じゃね……?"という言葉から始まりました」


隣にいる颯くんから距離を取り、指をさす響くん。


「おまっ!俺の責任にするつもりか!?言っとくが響の方から"それ、ずるくないですか"って言ったんだからな!」

「先に立ち上がったの颯くんですから!」

「俺の方が遅いわ!だいたいな──」


もうほんと聞きなれたやりとり。
その間に、雪さんはクスクスと笑いながら立ち上がり見ていた楽譜を、近くの机にに置いてある大きな箱の中にいれた。


「はい、どうぞ」


そして、立ち上がるのに手を貸してくれる雪さんに甘え、わたしも立ち上がり楽譜を入れた箱を覗き込んだ。


「わぁ……すごい量ですね」
「全部楽譜だよ。バラバラだけど。だからくじ引きみたいにして引いたのを見てたんだ」
「なるほど」

面白い選び方。


「……っておい!聞けよ!」
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