御曹司たちの溺愛レベル上昇中

「……は?」


開けた瞬間、誰かがいるやも……そう思っていたけど、そうではなくて。
中には誰もいなく、人の気配もなかった。

「なんだよ、拍子抜けだな」

颯くんは部屋の中へ入り、わたしたちも中へと続く。

「誰かいる方が大変だったんですし、この方がいいに決まってるでしょ。……でもあの二度の音の正体ってなんだろ」

響くんが全体を照らしていくと、

「……あ」
「なんだよっ」

雪さんが何かを見つけたのか、奥に歩いて行った。

「ごめん。あの音、俺のせいだ」
「雪兄さんの?」

しゃがんだ雪さんに合わせ、響くんが足元を照らせば、楽譜をしまった箱が床に倒れ、楽譜が散らばっていた。

──ここ、ピアノのあった部屋だったんだ。

広すぎてどこ歩いてきたが分からなかった。


「なるほど。ずっと同じ場所に置いていたから、この机の脚に負担がかかっていたんでしょ」

机の脚が斜めっていて、バランスが崩れ床に……

「多分。俺いじったせいかも。ごめんね、主に颯」
「え、俺?」
「一番怖そうにしてたから」
「お、俺は別に!?全然大丈夫だったけど?」
「うそ。一番慌ててたくせに」

澄ました顔で響くんは颯くんの顔を照らした。

「眩しっ……いいから今度はブレーカー見に行──うわ!!」

急に廊下の明かりがついたことに、颯くんの声が響いた。
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