御曹司たちの溺愛レベル上昇中
「なぁ、このままやみくもに歩いても仕方ないんじゃねぇの?長い間、小柳を歩かせるのも良くないだろ。暗いし」
「颯くん怖いもんね」
「そう、怖い……って、だから俺は怖くな──」
バサバサッ……
響くんにいじられ、肯定しかけたのを否定しにいった颯くんの言葉を遮るように、わたしたちが丁度通り過ぎようとした部屋の中から音がした。
ここだ──
という視線を僅かな光の中で交わし、響くんはゆっくりと取っ手へと手を伸ばす。
「ゆ、雪兄……い、いざという時は小柳を抱えて逃げられる準備しとけよっ。松葉杖は俺が武器として使うから。……小柳の安全が第一優先だ」
「分かった」
「当然でしょ。……もし、本当に誰かいた時は、僕と颯くんで仕留めるから」
──三人とも……わたしが無理についてきたのに、もとからそのつもりで……
「……じゃあ、いっきに開けますよ。準備はいい?」
わたしたちの頷きを確認した響くんは、勢いよく扉を開けた──