御曹司たちの溺愛レベル上昇中


取り壊しの知らせを握りしめながら、ヨロヨロと階段をおりるも、不安がこみ上げてくる。

……どうしよう。

お母さんに連絡しなきゃ……でも、とりあえず学校に行って落ち着いてからに──


歩いても足が地についていない気がして、ふらふらとわたしの膝は笑いはじめた。

うまく歩けなくなって、よろけて電信柱に掴まりしゃがみこむ。


「……どうしたらいいんだろ」


築38年、言ってはあれだがボロボロのアパート。家賃だって極めて安い。

今の家賃と変わらない場所なんか、なかなか見つかりっこない。



高校に通える範囲で──なんて条件付きなら、尚更。




「ははっ……」

人ってこんなに体、震えるもんなんだ。
膝だけじゃなくてわたしの全身に震えが伝わってきた。

だめだ。学校に間に合わなくなっちゃう。
立たないと。
再び電信柱に掴まり立ち上がろうとした時、わたしに近寄る影が──




「大丈夫ですかな?お嬢さん」

「えっ」


咄嗟に振り向けば、ハットを被り、綺麗なスーツを身に纏う紳士的なご老人がいた。


「あぁ……大丈夫、です。ご親切にありがとうございます」

お礼を言うのと同時になんとか立ち上がれた。
だが、立つことを意識しすぎたのか握っていた紙がするりと地面に落ちてしまった。


「あっ」

すぐさま拾おうとしたが、ご老人の方が先に拾い上げる。


「……おや」

見えてしまった文面に、ご老人はわたしを見る。

「お住まいをお探しで?──」

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