御曹司たちの溺愛レベル上昇中
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「……お前、今日どうしたんだよ」
帰り支度をしているわたしのもとに、中学の頃から一緒の小鳥遊くんが声をかけてきた。
普段はツンとしているけど、根は優しい人だ。
「え、いやぁ……ちょっと寝坊しちゃって」
あはは、と取り繕った笑顔を返す。
だけど小鳥遊くんに訝しげな顔をされてしまった。
あ、これは完全にあやしまれてる……。
「遅刻はするし、授業中は上の空、ただの寝坊ってわけじゃないだろ」
ご名答もいいところだ。
俯くわたしを見てか、小鳥遊くんは優しい口調に変わった。
「別に無理に言えってことじゃないけど……何かあるなら、さ」
聞いてやる――と。
「ちょっと、場所変えてもいいなら……」
──屋上に移動して、柵に背を預ける小鳥遊くんと二人並び、グラウンドを見ながらわたしは切り出した。
「実はさ、ウチ……なかなかの貧乏でして」
「ん」
「アパート住まいなんだけど、その……取り壊しが決まったみたいで。半年以内に、住むとこ探さなきゃいけなくなってさ」
取り壊し、という言葉を口にすると心が重くなり、柵に握った。
こんなこと、相談されても困るだろうな。
「だから遅刻したのか……で、どうすんの?あてとかあんの?」
「あて……と言うか、遅刻した理由がもうひとつあって──」