バツイチナースですが、私を嫌っていた救急医がなぜか溺愛してきます
たまたま次の週の月曜日、拓翔も休みだったから三人でのお花見になった。
とてもよく晴れていて昼間は気温が上がりそうだ。
桜は前の週より少し開いて、七分咲きくらいかもしれない。
「どこに行くの? 上野かしら千鳥ヶ淵あたりかしら」
お昼をすませてから拓翔の車に乗り込むと、佐和はさっそくはしゃぎ始めた。
拓翔が連れて行ってくれたのは、青葉大学病院に隣接している小さな公園だった。
病院側の桜並木と、公園に植えてある桜が重なるように見えて、まるでピンクの海のようだ。
平日だし、近所の人たちは見慣れているのか素通りしていてあまりひと気はない。
「きれいねえ」
「そうですね」
佐和も目の保養だと喜ぶし、香耶も心が洗われる気がした。
花見でリフレッシュできたのか、佐和は夫の物を整理して、それが終われば旅行に出ようかとあれこれ考えつくまましゃべっている。
やれやれといった顔で祖母を見ていた拓翔が、香耶の方を向いた。
「祖母から離れていくのか」
拓翔は、佐和の庇護のもとにいた方が生きやすいだろうと言わんばかりだ。
「そのつもりです」
「君は、見た目よりずっと強いな」
もともと香耶は、家を出てひとりで暮らしていくと決めていた。
思わぬ結婚、そして離婚とで数年回り道をしてしまったが、また新しく始めればいいだけだ。
自分では強いとは思っていないが、こんな変化に富んだ運命も悪くないと思えるようになっている。
花見のあとも、香耶を見る拓翔はどこか心配そうな顔をしたままだった。