バツイチナースですが、私を嫌っていた救急医がなぜか溺愛してきます
「ただいま、香耶」
もう一度そう言いながら、香耶の存在を確かめるように力がこめられる。
「拓翔さん、会いたかった」
自然に香耶は自分の腕を拓翔の背に回していた。
細身のようで、筋肉質な拓翔の体は思った以上に硬かった。
いつもの香耶からは想像もできない行為だったのか、拓翔の方が驚いたように声をあげた。
「香耶、大丈夫か?」
「ええ」
香耶は拓翔の胸に体重を預けるように倒れ込む。
「拓翔さんは温かいのね」
「香耶」
「それにとっても大きい」
拓翔の手はそっと香耶の頬に触れてきた。
「私……」
「何も言わなくていい。急ぎはしない」
拓翔の手がが香耶の頬をゆっくりと撫でながら下りてきて、親指が唇をなぞる。
「キスしたい」
そう言って、端正な拓翔の顔が近づいてきた。
しっとりとしたやわらかいものが香耶の唇に触れる。
唇同士が柔らかく幾度かこすれ合い、そのはずみに時おりお互いの息がもれる。
下唇を少し噛むようにして挟まれたら、香耶は震えてしまった。
それは嫌なものではなく、背筋に電流が流れるような感覚だ。
香耶が拓翔のキスに甘い痺れを感じていたら、少し強く唇を吸われた。
思わず香耶の背が揺れると、拓翔はそこに手を回して撫で上げてくる。
「ああ……」
拓翔の唇が離れると、香耶の目には涙がにじんできた。
「会いたかった、香耶」
「私もです」
もう一度ギュッと抱きしめられたら、香耶の目尻からひと筋の涙がこぼれた。
けして悲しみの涙でないことは、拓翔にも伝わっただろう。
ふたりの関係が、また一歩進んだことに香耶は言い表わせない喜びを感じていた。