バツイチナースですが、私を嫌っていた救急医がなぜか溺愛してきます
「なんてヤツだ」
「結婚式を挙げてから聞かされて、とっても驚いたけど、どうしようもなくて」
拓翔も事実を知って、さすがに言葉がないようだ。
「望まない結婚だから、妻して扱うつもりはないって。私には帰るところも行くところもなかったし、会社のために我慢しようと思ったの」
あの離れで過ごした日々。洸太郎の視線を思い出すと、ゾクッとする。
「二年間、恵子さんの看護をしてお屋敷の離れだけで過ごしたわ。でも夫に監視されているうちに、だんだん心がマヒしたんです」
あの頃は当たり前だと思っていたことが、本当はおかしかったと後になってわかった。
「離婚すると言われた時は、うれしかった」
香耶の話に衝撃を受けたのか、拓翔は無言のまま香耶の背をなでている。
「離婚届にサインしたら、夫から愛人として屋敷に一生いろって言われたので、怖くなって逃げ出したんです」
「それで、長野に」
「それからは太田に見つからないよう、人目を避けてました」
地味な服装や化粧をしていた理由がわかったからか、拓翔がフッとため息をついた。
「おばあ様は知っていたのか」
「はい。佐和様にだけお話していました」
これまで黙っていてすみませんと言うと、拓翔はそっと抱き寄せてくれた。
「よく逃げてくれた」
「拓翔さん」
「大丈夫だ。これからは俺が守る」