ミーコの願い事 始まりの章 「ペンタスとヒトデ」

人生のプロローグ

 これが三年前から現代にいたる私の出来事。
 あれから月日が流れ、正はもうじき日本に帰国する。
 仕事も順調で、担当していた料理のレシピ本もやっと発売された。

 何度も料理の先生に聞いていたから、仕事が進まず嫌な顔をされたけど。
 そこには作画の名前は森川では無く、茜の知る霞京子の文字が書かれている。
 それは私がデザイナーとして、最後の作品となった。

 あの日、目の前から消えるように無くなってしまったヒトデのペンは、ペンタスが形を変え現れた、魔法のペンだと私は信じている。

 子供の時に埋めた花、アカネ科の草山丹花(クササンタンカ)は、学名がペンタスであると知ったから。  
 ペンタスは落ち込んだ私をはげますため、また会いに来てくれた。存在を思い出させるように、茜にも会わせてくれた。 

 この手紙に書かれた最後の文書だけは、ペンタスが私の本当の気持ちを代わりにつづってくれたものだろう。
 きっと、最初の手紙にも。

 正が帰国したら聞いてみようかしら? いやいや、流石に渡した手紙の内容を聞くのは恥ずかしいわね。
 そうだ、明日、会社に着いたら蘭に打ち明けようか? 

 不思議で面白いし、何よりロマンチックだし。
 いや待てよー。蘭のことだから寝ながら書いたのじゃないかとバカにされそうで、それもイヤだわ。

 子供ぽい文書も私らしいと笑われそうだし。そう考えるとムカついてきたから、教えてあげない。

 私は勝手にイライラしながらも、窓から見える空を再び眺めていた。
 赤く染める夕日は落ちることなく、訪れる夜空を小刻みに押し戻しているようだった。

 見つけた一番星だけが輝き、それ以外の星は姿を診せることは無かった。 
 
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