メガネを外したその先に
たった数メートル先の冷蔵庫に水を取りに行くことさえ億劫で、枕元に置いておいたペットボトルはかなり温くなっていた。


浅い眠りを繰り返す中で、枕元のスマートフォンがバイブ音を響かせる。

その振動が頭を震わせてきて、不快感に皺を寄せながら画面を覗き込むと、“大橋龍弥”の文字が目に入った。


しかも、メッセージではなくまさかの着信だ。


「もしもし、せんせ…ゴホッ、ゴホッ」


後先考えずに通話ボタンを押したものの、掠れた声に咳が重なりかなり悲惨な状態だった。


『風邪、引いたのか』
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