メガネを外したその先に
電話越しに響く先生の落ち着いた声が、心地良い。


「はい…久しぶりにやられました」

『熱は?』

「38度ちょっと」

『薬は飲んだのか?』

「…薬、のんでない」

『買って行ってやるから待ってろ』


そう告げた先生との通話が切れる。

回らない頭で先生の言葉の意図を噛み砕き、先生が家に来るということだと理解できたけれど、着替える力もなく、私は再び意識を飛ばす。


次に目を覚ましたのは、再びスマートフォンが通話を告げて震え出した時だった。
< 104 / 213 >

この作品をシェア

pagetop