メガネを外したその先に
「卒業おめでとう」


合格を伝えた時と同じようにくれた言葉。

先生からの“おめでとう”は、誰にもらうよりも特別で、私の心を揺さぶる。


「ありがとう」


視線を下げると、先生の白いネクタイが視界に映る。


たくさん言葉を考えたはずなのに、いざ先生を目の前にすると頭が真っ白になってしまう。

両手を重ねてぎゅっと握ると、自分の手が震えているのがわかって余計に緊張が煽られた。


私の言葉を待つだけで何も発しない先生は、きっと私が告おうと思っていることを察している。
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