メガネを外したその先に
…期待していなかった、と言えば嘘だ。

文化祭になれば、ひょっこり顔を出しに来てもおかしくないと思っていた。


でも、現実はこんなものだ。


卒業して新しい環境に身を置けば、誰だって目の前のことに必死になるもので。

自然と過去を振り返る時間は減っていくし、過去は過去として思い出の中に仕舞い込まれていく。


“龍弥先生に出会えてよかった。”

この場所で、そう告げてきた長谷川を思い出す。


どんどん前へ進んでいく生徒に比べて、教師だけが過去に取り残されているような気分に陥る。
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