メガネを外したその先に
「龍弥、せんせ…」


懐かしい声が、懐かしい呼び方で、俺を呼ぶ。

何度も校内で思い出していた声が目の前の現実と重なり、柄にもなく動揺した。


「久しぶり」


俺たちのやりとりを聞いていた雪乃さんが、隣で首を傾げる。


「お知り合いですか?」


その問いに、心が揺らいだのは何故なのか。

やましい関係でもないのに、口にするのを躊躇う。
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