メガネを外したその先に
「せんせ」

「ん?」

「風邪なおったら、デートしてくれる?」


風邪で弱りきった彼女の願いを、無碍にはできない俺の心を読んでいるのだろうか。

言い訳ができる余地を、残してくれている。


俺が断ったら、また彼女は無理して笑って“やっぱりダメかぁ”などと言いそうな気がして、その光景を想像すると胸の奥が締め付けられた。


「…考えとく」


いろんな感情が渦巻き、即答はできなかったけれど、俺の中では教師と元教え子という壁を取っ払うための大きな一歩だった。
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