メガネを外したその先に
「こんなに先生に優しくしてもらえるなら、風邪引くのも悪くないなぁって思って」


うどんを食べながら、長谷川はいつものように真っ直ぐ純粋な気持ちを俺に向けてくる。

自分の気持ちを誤魔化し続ける俺とは違って、その姿があまりに綺麗で汚したくないとさえ思う。


いつだって、俺は真正面から向き合ってやれてない。


やっぱり他の奴らと同じで、いつしか彼女も今抱いている気持ちが恋じゃないと気付くんじゃないかって。

十歳も離れた彼女には、きっともっと彼女に似合う男がいるんじゃないかって。


でも、長谷川はいつだって俺の一歩先を行く。

躊躇ってその場に立ち止まろうとする俺を、あっという間に動かす。
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