メガネを外したその先に
いつもの椅子に腰を下ろし、机の上に頭を預けながら項垂れていた時、ガラッと教室の扉が開く音がして頭を上げた。


そこに立っていた龍弥先生が、片手にテキストを持ちながら私の目の前の席に腰を下ろす。

持っていたテキストでポンッと優しく頭を叩かれて、そのテキストが私のものなのだと悟った。


「あったぞ」


頭の上に手を伸ばし、龍弥先生の手からテキストを受け取る。


「どこにあったの?」

「お前のクラスの奴が届けてくれた」


あらゆる方面からクシャクシャにされた形跡が残っていたテキストに、先生の言葉はきっと優しい嘘なのだと思った。
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