メガネを外したその先に
「長谷川、そろそろ敬語やめない?」


ゆっくりと距離を縮めてくれる先輩のペースは、私にとってすごくありがたかった。


「はい、では今からタメで」


少しくすぐったくて、恥じらいが混じる。


まだ名前はお互い苗字呼びだったけれど、いつかきっと下の名前で呼び合う日が来るのだろうか。

その時には、先生への想いも消えているはず。


叶わない想いを抱き続けていたって報われないし、虚しいだけ。

でも、毎日募らせていた淡い気持ちは、気付けば自分で思うよりも強く心の中に根付いていた。
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