メガネを外したその先に

glasses6

【高校二年・冬】


教室が、甘ったるい香りで溢れている。

男子も女子もソワソワしている空気の中で、私も例外ではなかった。


昨年は、“甘いの嫌い”とバッサリ跳ね除けられて受け取ってもらえなかったチョコレート。

今年は悩みに悩み抜いた末、昨日夜な夜なキッチンに立ち、お餅でおかきを揚げてみた。


チョコレートではない物を渡すことに、果たしてバレンタインとしての意味があるのかは謎。

でも、これは、“昨年と同じ断り文句は受け付けません”という私なりの意思表示のつもりだ。


放課後、おかきの入った鞄を抱えながら職員室まで向かう足取りは、期待と不安が入り混じっていた。
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