メガネを外したその先に



校門を潜り、渡せなかったおかきを手に取る。

行儀が悪いと思ったけれど、綺麗に綴じた袋を開け、おかきを一つ摘み口に放り込む。


サクッとした音と絶妙な塩梅の塩加減。

今年は何を渡そうって、一ヶ月程前から悩んでいた時間も虚しく消えていく。


堪えていた涙が溢れ落ち、慌てて指先で拭う。


「長谷川?」


向かいから声を掛けられて顔を上げると、こちらに向かって歩いてくる風間先輩がいた。
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