Tageliet──永遠の秘薬──
❁.




 クラウスの影響だろうか? ここ最近、イザベラは月を見上げることが多くなった。闇夜に降臨する孤独な王の如く、光り輝くその姿はクラウスとどこか重なって見えていた。

 その印象は、初めて会ったあの時から変わってはいない。





 その日の夜、彼女は彼の側にいた。

「あなたが持っていたあの歴史書⋯⋯あれはこの世に一つ?」

 クラウスが言っていた『薔薇の誓い』────イザベラはそんな名前の書物を父の執務室で見たことがあったと思い出していた。

「その背表紙には、薔薇を象った紋章があったのを覚えている⋯⋯⋯⋯。もしかしてあれも、あなたたち一族の所有物だったのでは?」

 もしそうであったのなら、『シュタインフェルト』のこれ以上ない非道な行いはもう受け入れられない────と。
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