リベンジ溺愛婚~冷徹御曹司は再会した幼馴染を離さない~
梨央ちゃんから連絡を受けて急いで家を出たので、服装も普段着のワンピースにオーバーサイズのシャツを羽織っただけのシンプルなもの。足元はスニーカーだ。
肩下まで伸びた茶色の髪は後ろにひとつに束ねただけだし、今日は朝から雨が降っていて自宅で過ごしていたので化粧もほとんどしていない。
早くリップを梨央ちゃんに渡して帰りたいのに、彼女が現れる気配はない。
もう一度連絡をしてみようとバッグからスマートフォンを取り出そうとしたとき。ふと目の前を通り過ぎたスーツ姿の男性からなにかがぽろっと落ちるのがわかった。
ちょうど私の足元に落ちたそれを拾うと、見るからに上質な皮素材のカードケース。サイズからして名刺入れだろうか。
男性は落とし物をしたことに気づく様子もなく、エントランスに向かって足早に去っていく。その背中を慌てて呼び止めた。
「あの! 落とし物ですよ」
けれど男性は声をかけられたのが自分だとは気づいていないようだ。私は男性に駆け寄り「すみません」ともう一度呼びかけた。