リベンジ溺愛婚~冷徹御曹司は再会した幼馴染を離さない~
その突き刺すような視線に耐えていると、隣にいる涼成くんがさっと横にずれた。私をおじい様から隠すように目の前に彼の背中が現れる。
「今日はお忙しいと伺っていましたが、ご予定はもうお済みになられたのですか」
「いや、まだ一件残っている。時間が空いたから顔を出しただけだ」
「そうですか」
涼成くんとおじい様のどこかピリピリとした会話が響いた。ふたりからは祖父と孫の関係とは思えないほど殺伐とした雰囲気が伝わってくる。
「涼成」
おじい様が一段と低い声で涼成くんを呼ぶ。
「お前の後ろにいる彼女にしっかりと伝えておけ。嫁にくるからには、多岐川の名を汚すような真似だけはするな、と」
おじい様は私を歓迎していないのだろう。それがとてもよく伝わってくるような言い方だ。
すぐに涼成くんがなにかを言い返そうとしたが、お父様に〝口答えするな〟と視線で止められて仕方なさそうに口を閉じた。
背中を向けたおじい様が大広間を出ていった瞬間、これまでピリピリとしていた雰囲気がしゅるしゅると溶けていくのがわかった。
涼成くんが大きなため息を吐いてイスに腰を下ろす。私も力が抜けたようにストンと座り直した。