リベンジ溺愛婚~冷徹御曹司は再会した幼馴染を離さない~
「そんなはずないと思うけど」
男性は呟きながら高い背を屈めて、私の顔を覗き込む。くっきりとした二重の目をさらに大きく見開き「やっぱり」と小さな声で口にした。
そのとき、男性の方から着信音のような音が聞こえた。スーツのポケットからスマートフォンを取り出し確認してから、男性はちらりと私に視線を向ける。
「少しだけここで待っていてくれないか。すぐに戻る」
そう言って男性は急いだ様子でこの場を去っていく。離れていく背中を見つめているとやがてロビーの角を曲がって見えなくなった。
「――柚葉」
ふと女性の声で名前を呼ばれた。振り向くと華やかなパーティードレスに身を包んだ梨央ちゃんの姿がある。
「リップ早く渡して。すぐに戻らないといけないから」
梨央ちゃんが右手を差し出す。その口調と表情からは機嫌が悪そうな雰囲気が伝わってきた。
「これでいいんだよね」
バッグからリップを取り出して渡す。受け取った梨央ちゃんが大きくため息を吐いた。
やはりご機嫌斜めのようだ。パーティーでなにかあったのだろうか。