リベンジ溺愛婚~冷徹御曹司は再会した幼馴染を離さない~
再びため息を吐き、腕組みをした梨央ちゃんが不満そうに口を開く。
「せっかく大物とお近づきになれるチャンスだったのに。こういうパーティーにはほとんど参加しない人だから声をかけてみようって思ってたのにいつの間にか帰ってるんだもん」
梨央ちゃんの機嫌が悪い理由はきっとこれだ。
今夜のパーティーで狙っていた男性とお近づきになれなくて拗ねているのだろう。
「仕方ないから、他の男でも見つけようかな」
そうぼやきながら梨央ちゃんはくるんと背中を向けるとパーティー会場へと戻っていった。
突然呼び出されて忘れ物を届けたのに、お礼の言葉すらなかった。
でも、彼女がそういう性格だというのはもうわかっている。
「帰ろう」
早く家に帰ってぺこぺこのお腹を満たしたい。
ロビーを離れようとしたところで、ふと先ほどの男性のことを思い出した。
待っていてと言われたけれど、そうした方がいいのだろうか。
そもそもなぜそんなことを言われたのだろう。私は男性が落としたカードケースを拾っただけなのに……。
少し待ってみたけれど、男性が戻ってくる気配はない。
帰ってもいいかな。
私は足早にロビーを移動してエントランスを抜けるとホテルをあとにした。