血管交換シヨ?
三日月シーソー

愛の重さ

「すーちゃん」

「中原くん?」

十一月になっていた。

時々、夏に戻ったみたいに陽射しが強い日もあるけれど、
もうほとんど制服の上にカーディガンが必須になってきた。

天気が良かったから屋上でお弁当を食べていたスズとしろちゃんを
中原くんが見下ろしている。

天気はいいけれど風が少し冷たいのに
中原くんはブレザーも脱いで、
シャツの袖も捲っている。

「中原、寒くないの?」

しろちゃんがタコさんウィンナーを頬張りながら訊いた。

「サッカーしてたから暑くてさ」

「元気だねぇ。汗かいたんでしょ?ちゃんと拭かないと風邪引くよー」

「しろちゃん、ママみたい」

「まだ十六歳ですー」

「サンキュ、綿貫ママ」

「殴るよ?」

「あはは。ごめんごめん。すーちゃん、弁当食ったらでいいからさ、ちょっと話せる?」

中原くんは申し訳なさそうに眉をちょっと下げてスズを見た。

スズはしろちゃんを見た。

「私なら大丈夫だから聞いてあげな。ちょうど次の数学の宿題忘れてたからやんなきゃなんだよね」

「綿貫が宿題忘れるとか珍しいな」

「完璧な人間なんていないのよ」

たぶん、嘘。

しろちゃんが宿題を忘れたことなんて
中学の頃だって一度も無い。

気を遣ってくれたんだと思う。

「しろちゃん、ありがと」

「中原」

「ん?」

「鈴芽に変なこと言って泣かせたら許さないからね」

「承知致しました、綿貫ママ」

「あんたほんとにブン殴る」
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