冷血硬派な公安警察の庇護欲が激愛に変わるとき~燃え上がる熱情に抗えない~
『恋人……う、うん、そうなんだけど付き合ったばかりだし、ここを解約するにしても日割りでの家賃の払い戻しはできない契約だから、もったいない。とりあえず今月中はここにいるよ。そのあとのことはゆっくり考えて――』

『ダメだ。五日以内に俺の家に引っ越してもらう』

どうやら提案ではなく決定の知らせだったようで、その強引さに引っかかり、理由を尋ねずにはいられなかった。

『俺が耐えられない。離れて暮らせば月に二、三日会えるかどうかだ。葵はそれで平気なのか?』

(平気じゃないけど……)

『あのね、実は大和さんと一緒にいると落ち着けないの。ずっとドキドキしてるから……。この先も毎日一緒だと、身が持たないかも』

『それは……慣れてくれとしか言えないな。今から少しずつ練習しよう』

『えっ?』

男の顔をした彼に抱き寄せられ、額に二度目のキスをもらった。

五日前を思い出して照れていると、手元に集中できなくてオムレツがきれいに焼けなかった。

お皿にのせてから形を整えたチーズオムレツとトーストした食パン、サラダとコーヒー。

それらをふたり用の食卓テーブルに並べる。

木目の天板のシンプルな食卓テーブルは、引っ越してきた日に買ったものだ。

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