冷血硬派な公安警察の庇護欲が激愛に変わるとき~燃え上がる熱情に抗えない~
「池に入ります」

「そう」

今度は銃口を背中に当てられた。

震える足でゆっくりと池に向かいながら、死を覚悟して大和に謝罪する。

(ごめんね。無事に戻れなくて)

わずかな距離を歩く間に、大和との思い出が次々と浮かんでくる。

父の葬儀で謝ってくれたのは彼だけで、この人は信じられると直感した。

祖母とのふたり暮らしの家を度々訪れては、色々と世話を焼き支えてくれた。

兄のように慕い、その気持ちが恋へと変化してからは素直になれずに反抗した。

自分でも呆れるほどだったのに彼は見捨てず、いつも助けてくれて、その優しさが嬉しくもあり、妹扱いされていると思うと悲しくもなった。

兄妹のような関係が崩れたのは、捜査協力という目的のもとで一緒に暮らしてからだ。

腕枕をしてもらった時のときめきと緊張に、両想いだと知った時の喜びと幸せ。

恋人になってからの日々は、思い出にするには日が浅く、始まったばかりなのにと悔しくなった。

(いやだ。死にたくない。もう一度だけでも大和さんに会いたい。だって私、まだ伝えていない言葉がある)

『愛してる』

これまで大和は三度もそう言ってくれたのに、葵は恥ずかしくて同じ言葉を返せていない。

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