冷血硬派な公安警察の庇護欲が激愛に変わるとき~燃え上がる熱情に抗えない~
言えばよかったと後悔すると、諦めたくない気持ちが急激に膨らんだ。

(まだ死ねない。生きて大和さんのところに帰らないと)

暗く広がる水面を前に足を止めていると、背中にあたる銃口に力が加わった。

「早く入りなさいよ」

「できない……」

「は?」

勢いよく振り向いて銃身を両手で掴み、銃口を逸らした。

パンッと大きな音がして二発目が発砲されたが、銃弾は水面に吸い込まれただけ。

そのまま拳銃の奪い合いになる。

「離しなさいよ!」

「絶対に離さない。生きて、帰るんだから!」

必死に抵抗していたが、足が滑って体勢が崩れた。

「あっ」

腹部を蹴られて濡れた芝生に尻もちをつき、銃身から手が離れてしまう。

「終わりよ」

二歩の距離で銃口を頭に向けられ、今度こそ死を予感したその時――。

風のように誰かが駆けてきた。

目の前に飛び込んできたその人は、葵が驚くよりも先に長い足で菜美恵の手元を蹴り上げた。

池の遠くの方で、拳銃が落ちた水音がする。

そうかと思ったら今度は悲鳴が上がった。

その人の手によって、菜美恵が芝生の上でうつ伏せに倒されていた。

瞬く間に彼女を制圧したスーツ姿の男性は――。

「大和さん」

彼だけではなかった。

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