冷血硬派な公安警察の庇護欲が激愛に変わるとき~燃え上がる熱情に抗えない~
欲しかったスクープではないので、興味を失った葵はナポリタンに視線を戻した。

その時、ポケットの中で携帯が震え、急いで取り出すと待ちわびていた連絡だった。

【急で悪いが、明日の夜はどうだ?】

知り合いからの食事の誘いにたちまち笑顔になり、胸が躍る。

土曜の夜は接待などの動きがあるかもしれないので多野元を見張った方がいいのはわかっている。

それでもすぐに了承する旨の返事をした。

十年ほど胸に秘めている恋心が、誘いを断らせてくれなかったのだ。



翌日の十八時過ぎ。

葵は愛車を走らせ、恵比寿にある寿司屋に向かっている。

(結局、いつもの服にしちゃった。度胸がないな)

マウンテンパーカーの下は着慣れたニットと、茶系のストレートパンツ。

フェミニンなワンピースをかなり前に買ったのだが、いまだ活用された試しはない。

(私が女っぽい恰好をしたらきっと驚く。『どうした?』と聞かれたら、返事に困るもの)

これから会う男性とは月に一度、食事をしているが、デートではない。

完全に葵の片想いで、異性として見られていないのは百も承知だ。

近くのパーキングにスクーターを止めて三分ほど歩くと、待ち合わせている寿司屋に着いた。

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