春待つ彼のシュガーアプローチ
遠ざかっていく男子生徒の足音。


彼がここを出て行ってから10分ほど経った。


誤返却されていた禁帯出本を元の場所に戻した後、少し乱雑に本が並んでいた別の書架の整頓を手早く終えた私。


カウンターに戻ろうとした時、先ほどの生徒が座っていたソファーの上に黒色の何かが落ちているのに気づいた。


これ、キーケースだ。


どう考えてもさっきの人のものだよね。


急いで追いかければ渡せるかも。


直ぐにカウンターに向かった私は先輩たちに事情を説明して図書館を飛び出す。


昇降口、そして校門のところまで走ってきたものの彼に遭遇することはなかった。


ダメだったか…。


10分ぐらいあれば、徒歩でも結構遠くまで行っちゃうよね。


息を切らしながら学校前の道路を左右確認したけれど、彼らしき後ろ姿は見当たらない。


仕方ない。


このキーケースは職員室に届けよう。


諦めて校舎に戻るべく引き返し始めた時だった。


前方から俯き加減で歩いて来るミルクティー色の髪の男子生徒が目に映る。


「あっ、さっきの人!」


急いで駆け寄ると、彼は面倒くさそうに顔を上げた。


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