春待つ彼のシュガーアプローチ
「どうした?俺の顔に何かついてる?」
「そうじゃないの。氷乃瀬くん、楽しそうに食べるんだな…と思って」
「そりゃ楽しいよ。陽咲が隣にいるんだから」
その言葉と共に向けられたのは“当然だろ”と言わんばかりの笑顔だった。
「確かに、一人で食べるよりも複数人で食事する方が楽しい時ってあるよね。こんな風に自然に囲まれて…とかだったら尚更」
……あれ?
何か変なこと言った?
一瞬、氷乃瀬くんの動きがピタリと止まったけれど、すぐにフッと笑った。
「半分正解」
「えっ?」
「やっぱり、ちゃんと伝えないと伝わらないよな」
さっきの言葉って、別に謎解きとかじゃないよね?
どこがどう間違ってたんだろう。
首を傾げていると、氷乃瀬くんは2個目のベーグルサンドを食べようとしていた手を止めた。
「あのさ、俺……」
その時、スマホのバイブ音が聞こえてきて。
氷乃瀬くんはポケットから取り出すと、眉をひそめながら画面を見つめた。