春待つ彼のシュガーアプローチ
「氷乃瀬くん、私と同じメニューで本当に良かったの?」
「もちろん。色んな種類があって決めかねていたし、せっかくなら陽咲がチョイスしたものを食べてみたいと思ったんだ。それに、飲み物は違うじゃん」
それはそうだけど…
私にとっては、あのお店に行ったら必ず購入するぐらいお気に入りのベーグルサンドでも、氷乃瀬くんには違うかもしれない。
だって、好みは人それぞれだから。
「いただきます」
一口かぶりついた氷乃瀬くんは目を輝かせた。
「このアボカドとエビのサンド、うまっ…」
「ほんと?」
「こんなに上手いベーグル初めて食べた」
私も初めて食べた時に同じこと思ったっけ。
気に入って貰えたみたいで良かった。
胸を撫で下ろしてベーグルサンドを口に運んだ。
それにしても、食べている時の氷乃瀬くんって柔和な表情するよなぁ…。
肉まんを一緒に食べた時もそうだった気がする。
学校ではいつもクールで、女の子たちに囲まれれば不機嫌な空気を漂わせているのに。