神殺しのクロノスタシス1
場所を改めて。

「…それで、『死火』の契約者である君は…名前、何て言うの?」

まず最初に尋ねてきたのは、そんなありきたりな質問だった。

…そういえば、まだ名乗ってもいなかったな。

「無闇(むやみ)・キノファ」

「無闇君ね。改めて、私はイーニシュフェルト魔導学院の学院長、シルナ・エインリーです」

「俺は羽久・グラスフィア」

羽久・グラスフィア…。先程の戦いを見たところ、かなり高度な時魔法の使い手らしい。

「それで無闇君…。君の後ろにいる女の子は?」

「…」

俺は振り向いて、月読と顔を見合わせた。

…月読の姿が見える者に会うのは、久々だな。

「…月読。彼女が『死火』だ」

「ふむ…。やはりそうだったんだね」

「…言っておくが、月読を『禁忌の黒魔導書』と同じだと思わないでくれ」

彼女も危険だから封印してしまおう、なんて言われたら、俺は今すぐこの二人と戦わないとならなくなる。

それは遠慮したい。

しかし。

「勿論、分かってるよ。その子からは、全く悪意を感じない」

悪意を感じない…か。

その通りだ。

「無闇君。君はいつから『死火』と…月読ちゃんと一緒にいるんだい?」

「…」

「あ、離したくないなら無理には…」

「…いや」

この二人が、今まで俺達を狙って何度もやって来た不届き者とは違うことは…既に分かっている。

俺から『死火』を取り上げるつもりで来た訳ではないことも。

ならば…。

「…お前達になら、話しても良い」

俺が何故『死火』と共にあるのか。

俺が『死火』と共に、どうやって生きてきたのか。

その全てを。
< 404 / 669 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop