神殺しのクロノスタシス1
この世界に来て、三日目を迎えたその日。

新聞を読んだ後、俺はまたしてもバスルームを借り、シャワーを浴びてから、キッチンでコーヒーを淹れた。

それを飲みながらゆったりとソファに座り、ぼんやりと過ごしていた。

家主がいない間に、随分なくつろぎようである。

家族の留守中に、あんまり家の中のものを食べたり飲んだりすると、見つかる危険が大きくなるのだが。

インスタントコーヒーの粉くらいは、少々減っていてもバレないものだ。

毎日あと何グラム残ってる、と量ってる訳でもないだろうし。

とはいえ、あんまりのんびりとはしていられない。

いつ家族の誰かが帰ってくるかなんて、分からないのだ。

実は今日は午前中しか授業がありませんでした、と子供達が帰ってくるかもしれないし。

そんなとき、家の中でくつろいでる不審者がいたら、修羅場になることは間違いない。

あくまで居候であることを忘れるな。

その点、この家は便利だ。

玄関が一階で、二階がリビングだから。

万一予想外に早く家族が帰ってきたとしても、玄関の音を聞き付けて、急いで屋根裏に上ることが出来る。

割と適当に選んだ家なのだが、そこは当たりだった。

だが、幸いなことに、夕方になるまで誰も帰ってこなかった。

お陰で、俺は夕方までリビングでのんびりと過ごすことが出来た。

正午のニュースも確認したが、やはり捜査に進展はなく。

ホッと一安心して、夕方になると、俺はまた屋根裏に戻った。

俺が屋根裏に閉じこもってほどなくして、家族の誰かが戻ってきた。

時刻は、午後四時半。

絶対とは言えないが、大体毎日このくらいの時間には帰ってくると思っていた方が良さそうだ。

この家には、しばらく厄介になるつもりだから。

それからほどなくして、次々と家族が帰ってきた。

午後八時には、家族全員が戻ってきた。

家族の誰かが、六時くらいに夕方のニュースをつけてくれたので、俺もこっそりとニュースに耳を傾けた。

やっぱり、まだ捜査に進展はないようだ。

この様子じゃ、Bちゃんの遺体はずっと見つからないまま、捜索が打ち切られるかもしれないな。

それはそれで、アリだ。

進展しない捜索に安心しながら、家族が全員寝室に戻る頃を見計らって、俺も目を閉じた。

この家で過ごす、二日目の晩である。

二日目ともなると随分慣れたが、それでもその夜は風が強くて、隙間風が凄かった。

あまりに寒くて、俺は音を立てないように気を付けながら、子供部屋から拝借してきたセーターとコートを着込んだ。

出来るだけ音を立てないように…とは言っても。

横になったまま、低い天井の下で、床が軋まないようにノロノロとセーターとコートを着込むのは、なかなか骨の折れる作業だった。

もしかしたら、寝室にいる夫婦に気づかれてしまったかもしれない。

夜だし、ネズミか何かが走り回っているのだと思って欲しいものだ。
< 94 / 669 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop