熱情を秘めた心臓外科医は引き裂かれた許嫁を激愛で取り戻す
 でも今は違う。彼に愛されるよろこびに満ち溢れ、幸せを感じる音に変った。
 いずれ、理人が言ってくれたように、彼と結ばれた末に宿る命があるかもしれない。
「架純……」
「大丈夫だから、理人さんの……好きにしてほしいです」
 息も絶え絶えだったが、それでも理人の願いを叶えたい気持ちでいっぱいだった。
「無理はしなくていい。だが、俺は君を感じたいし、君にも俺を感じてほしい……」
「……はい。そうしたいですし、そうしてほしいです」
「……そういう、健気な君に、俺は……いつも翻弄される」
 そういい、理人が唇を啄む。何度かそうして甘いキスを堪能したあと、架純は理人を見つめながら、おずおずと口を開いた。
「理人さんへのお誕生日プレゼント、でもあるわけですし」
「……っ」
 理人が覆いかぶさったまま固まってしまった。ただただ重たい。
「えっあの……」
「理性と、欲望と、愛しさと、衝動と、意地悪な気持ちと、様々なものがこみ上げて、どうすべきか……と」
 理人がそう言い、架純を愛おしそうに見つめる。
「い、意地悪は……」
「君のちょっと困った顔、無邪気に喜ぶ顔、ほんのり照れた顔、はしゃいでいる顔……嬉しくて泣いた顔、俺のことが大好きだと伝えてくれる顔。ぜんぶ、ほんとうに可愛くてたまらない」
「……理人さん」
「覚悟して。俺の溺愛は……これからが本番だから」
「わ、私も、これからは負けませんから。覚悟してくださいね」
「では、お手並み拝見しますか」
「望むところです」
 ふっと理人が笑うと、つられたように架純も笑った。
 それからまた息吹を交換し、命をわけあい、温もりを感じ合う。その夫婦の営みが愛おしい。
 初めて理人を迎え入れたとき、こんなにも強く脈を打つものがあることに驚いた。まるで心臓がそこにあるみたいに。そんな彼の鼓動をもっと感じていたくなった。
「架純、愛してる。何度でも……いうよ」
「私も何度だって言います。理人さんのこと愛していますから」
 互いの生きている鼓動を感じられるように、二人はしっかりと抱き合う。
 そしてこれからも、
 命が続く限り……。
 絆をしっかりと結ぶように。


 ひと晩明けたあと、隣に寄り添い合っていた理人を見て、
『仮初の契約妻になってくれないか』
 ふと、また架純の中に蘇ってくる言葉があった。
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