熱情を秘めた心臓外科医は引き裂かれた許嫁を激愛で取り戻す
 ホテルのチャペルで挙式を終えたあとはハネムーンプランの一つとしてそのままホテルのスイートルームに宿泊することになっていた。
 ルームサービスもハネムーン仕様に飾り付けられた料理が運ばれてきて目も舌も楽しませてくれた。
 食事を済ませたあとは初めて大きなお風呂に一緒に入ったりもして。新婚の時間を愉しんでいたのだけれど。
 この先に何が待っているのかは架純も覚悟をしていたのだが。
 仮初の妻だったときはきっと手加減してくれていたのだろう。大きな手術のあとのリハビリから今日までの間。まったく触れ合いがなかったわけではないが、彼はまるで壊れ物を扱うみたいに、或いはお姫様に従う執事かのように気遣ってくれていた。その弾みなのか、理人の気が急いているのがわかる。
 薄暗いダウンライトの中、素肌で触れあってベッドに身をもつれさせたあとの理人は、まるで初めて見る人みたいだった。
 誓いのキスとはまったく異なる、濃密なキスに翻弄され、架純の息は上がるばかり。
 這いまわる理人の大きな手にすべてを暴かれ、体感したことのない愉悦に泣くような声をあげて、彼からの愛撫を享受した。
「……架純、……っ」
 理人の身体が熱い。触れる胸の鼓動は彼の方が速いかもしれない。
「理人さ、……っ」
 濃密な咬合は飽きることなく続けられ、やがて唇以外にも身体の隅々に彼はキスをした。
「あ……っ」
 理人の指先に、やわらかな唇に、熱い吐息に、濡れた舌先に、何度翻弄されたかわからない。
「……かわいい、架純……君のぜんぶが、ほしい」
 譫言のように理人が言い、架純を奪っていく。
「あ、あっ……理人さんっ」
 こんなに激しく想いをぶつけられたことがなかったから架純はついていくので精一杯になる。
 架純は初めて感じる心地よさに何度、情緒を揺さぶられたか知れない。
 呼吸が乱れて身体が震えるのを凌いでいると、戻ってきた理人が架純にゆっくりと覆いかぶさるようにして見下ろしてくる。
「っ……大丈夫か?」
 こくり、と架純は頷く。
「……ええ」
 別の意味で大丈夫ではないのだけれど。こんなふうに鼓動が弾んでいることを実感するのが幸せだなんて思ったことはなかった。
 今まで鼓動は自分に恐怖を与えるものだったのだ。いつ尽きるかもわからない寿命の足音を伝えてくるものだった。
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