熱情を秘めた心臓外科医は引き裂かれた許嫁を激愛で取り戻す
架純が約束の場に到着してあたりを見渡そうとすると、ひらり、と花弁が舞うかのように一枚の栞が足元に滑り込んできた。
美しい桜の模様が印字されたその栞に目を奪われて手を伸ばしたとき、横からとんっと誰かに触れ合う。
どうやら人が側にいるのに気付かずにぶつかってしまったらしい。
「あ、すみません」
先にぶつかった相手の男の人の声がして、架純も慌てて謝った。
「こちらこそ、ごめんなさい」
とりあえず栞を捕まえて顔を上げると、男の人がほっとしたようにその栞へと視線を向けた。
「それ、オレの。大事にしてたやつなんだ。よかった」
「あなたのだったんですね。はい、どうぞ」
「うん、拾ってくれてありがとう」
大学生くらいか、或いは同じ年くらいか。さっそく読みかけの文庫本に栞をさしこんだ。
目の前の色素が薄く線の細い彼に、少しドキリとする。それは無論、異性へのときめきというのとは違う。自分と同じ病を知っている身体だと察知したのだ。
彼の側からは幾つもの花の香りがした。まるでお花屋さんの中にいるみたいだ、と架純は思った。
桜のかわいい栞を持っているのを見ると、読書だけじゃなくて花も好きなのかもしれないと勝手に想像する。
そんなふうに感じてから架純はハッとする。彼が怪訝な表情を浮かべていたからだ。
すぐに人を観察してしまうのは悪いくせだ。それじゃあ、と背を向けようとしたそのとき、彼に呼び止められる。
「ね、待って、もしかして、君がスミレ?」
なぜその名前を知っているのか、と架純が驚いて振り向くと、彼は屈託のない笑顔を向けた。
架純は反射的にこくこくと頷く。
「やっぱり! なんかそうなんじゃないかって思った。だって、アイコンのまんまスミレちゃんだからさ」
「えっ……待って。も、もしかして、あなたが、ハル!?」
あまりの衝撃に架純は声を上げてしまった。
「正解。会えてうれしいよ」
握手を求められるがまま無意識のままに応じてから、架純はハッとする。
「待って待って、えっと、私……混乱しているんだけれど、あなたって」
男の子に見える女の子、女の子に見える男の子。どっちがどっちか混乱した。
「男だよ」
さくっとハルが言い、肩を竦めた。
知り合って三年以上だというのに初めて発覚した新事実。
「ええええ!」
美しい桜の模様が印字されたその栞に目を奪われて手を伸ばしたとき、横からとんっと誰かに触れ合う。
どうやら人が側にいるのに気付かずにぶつかってしまったらしい。
「あ、すみません」
先にぶつかった相手の男の人の声がして、架純も慌てて謝った。
「こちらこそ、ごめんなさい」
とりあえず栞を捕まえて顔を上げると、男の人がほっとしたようにその栞へと視線を向けた。
「それ、オレの。大事にしてたやつなんだ。よかった」
「あなたのだったんですね。はい、どうぞ」
「うん、拾ってくれてありがとう」
大学生くらいか、或いは同じ年くらいか。さっそく読みかけの文庫本に栞をさしこんだ。
目の前の色素が薄く線の細い彼に、少しドキリとする。それは無論、異性へのときめきというのとは違う。自分と同じ病を知っている身体だと察知したのだ。
彼の側からは幾つもの花の香りがした。まるでお花屋さんの中にいるみたいだ、と架純は思った。
桜のかわいい栞を持っているのを見ると、読書だけじゃなくて花も好きなのかもしれないと勝手に想像する。
そんなふうに感じてから架純はハッとする。彼が怪訝な表情を浮かべていたからだ。
すぐに人を観察してしまうのは悪いくせだ。それじゃあ、と背を向けようとしたそのとき、彼に呼び止められる。
「ね、待って、もしかして、君がスミレ?」
なぜその名前を知っているのか、と架純が驚いて振り向くと、彼は屈託のない笑顔を向けた。
架純は反射的にこくこくと頷く。
「やっぱり! なんかそうなんじゃないかって思った。だって、アイコンのまんまスミレちゃんだからさ」
「えっ……待って。も、もしかして、あなたが、ハル!?」
あまりの衝撃に架純は声を上げてしまった。
「正解。会えてうれしいよ」
握手を求められるがまま無意識のままに応じてから、架純はハッとする。
「待って待って、えっと、私……混乱しているんだけれど、あなたって」
男の子に見える女の子、女の子に見える男の子。どっちがどっちか混乱した。
「男だよ」
さくっとハルが言い、肩を竦めた。
知り合って三年以上だというのに初めて発覚した新事実。
「ええええ!」