熱情を秘めた心臓外科医は引き裂かれた許嫁を激愛で取り戻す
「その代わり、よく彼女が言っていたことがあります。先生は神様じゃない。人間だからこそ必死に命を救おうとするんだって」
「……ああ」
「愛する人のために必死になるのも、誰かを救おうと奮闘するのも。その精神は人間だからこそ……持ちえるものだって思います」
「その通りだ」
「俺はずっと自分が人間として生まれてきたのはどうしてなんだろうと思いました。ココに疾患を抱えて……いうなら、時限装置付きの爆弾をはめ込まれたロボットみたいだって思ったこともありました」
「陽樹くん」
 嗜めるために声をかけた。
 しかし心配することはなかったらしい。彼はふっきれたような溌剌とした笑顔を向けてきた。
「その考えを変えてくれたのは、学生だった頃、入院中に親や友達がもってきてくれる花でした。それから俺、花が好きなんです。花には開花時期があっていつかは咲き終わっていく。それで終わる種類もあるけれど、また来年出会える花もある。俺はずっとどっちの花になれるかなって想いながら……卒業したあとは花屋のバイトをしていました」
「……そっか」
「そんなときにチャットでスミレと知り合ったんですよ。彼女もなんとなく俺とどこか似ているような気がしました。諦めながらもどこか希望を捨てきれない気持ちがあるような。そしてスミレと先生のことを見ていて思いました。やっぱりまだ生きていたい。だから俺も……怖くて引き伸ばしにしていたけど、覚悟を決めます」
 理人は陽樹に微笑んで、彼の肩にそっと手をやった。震えて強がる彼に力をわけあたえるように、彼の勇気をたたえるように。
「ひとつ、先生にお願いがあるんですけれど、いいですか?」
「人間の俺に、できることがあれば」
 理人が言うと、陽樹はたちまち目を輝かせた。
「じゃあ、先生とスミレが結婚式を挙げるとき、俺にブーケを作らせてもらえませんか?」
 理人は目を丸くした。陽樹は色々と飛び道具をもっているというか、彼の発言には度々驚かされる。そして理人はうっかり架純のドレス姿を思い浮かべてしまい、頬から耳のあたりに熱を感じた。
「唐突だな。まだ、俺たちは……」
「でも、いずれはするでしょう。スミレはちゃんと長生きしますよ。先生がついているんだから」
「勿論だ」
「俺の希望にもなってほしい。それを生きる力にさせてほしい。勝手だけど」
< 96 / 110 >

この作品をシェア

pagetop